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日本株市況

2026/9/12

「逃げ道」が消え始めたサウジ原油

東西パイプラインの一時停止と紅海でのフーシ派の勢力拡大が重なり、世界のサウジ原油の“迂回路”が同時に危機に陥り始めた——供給面・輸送コスト・市場心理の三点を軸に、日本株・世界市況への影響を整理する。

中東のエネルギー危機が、これまでとは違う段階に入りつつある。 問題は単に「中東で戦闘が激しくなっている」ということではない。 世界の原油供給を支えてきた複数の輸送ルートが、同時に機能不全へ近づいていることだ。 9月12日、Reutersはサウジアラビアが重要な東西パイプラインを一時停止したと報じた。ドローン攻撃を受けたことによる予防措置だ。このパイプラインは最近、日量400万~500万バレル、世界供給量の約4~5%に相当する原油を運んでいた。 さらにイランと連携するフーシ派が、紅海の出口であるバブ・エル・マンデブ海峡に位置するペリム島(マユン島)を掌握。その直前には紅海沿岸のモカも制圧している。 世界経済にとって問題なのは、この2つが同時に起きていることだ。 世界の石油輸送に「逃げ道」がなくなりつつある もともとサウジ原油の主要輸送路はペルシャ湾からホルムズ海峡を抜けるルートだった。 しかし米国とイランの戦争によってホルムズ海峡のタンカー交通は大幅に制約されている。 そこでサウジが使ってきたのが、 油田 → 東西パイプライン → ヤンブー港 → 紅海 というルートだった。 つまり東西パイプラインは、ホルムズ海峡に問題が起きたときの「巨大な迂回路」だった。 ところが、そのパイプラインそのものが攻撃されて停止。 しかもヤンブーからアジアへ向かうには、紅海を南下してバブ・エル・マンデブ海峡を抜けなければならない。 その入口でフーシ派が勢力を急拡大している。 つまり、 ホルムズ海峡 ↓ 危険 東西パイプライン ↓ 攻撃を受け停止 紅海 ↓ フーシ派の影響力拡大 という三重の問題が発生した。 これが今回の危機の本質だ。 すでにサウジの供給量は30年ぶりの低水準 これはまだ「起きるかもしれない危機」だけではない。 すでに数字に現れている。 IEAによれば、8月の紅海からの原油積み出しは、 日量380万バレル → 220万バレル へ減少。 サウジ全体の供給量も、 日量約600万バレル まで落ち込み、約30年ぶりの低水準となった。 さらにAPがKplerのデータとして伝えたところでは、サウジからアジアへの輸出は6月の日量約340万バレルから8月にはわずか12.8万バレルまで急減。その後70万バレル程度まで回復したものの、平常時からはほど遠い。 だから今回のパイプライン停止はかなり重い。 すでに弱っていた供給網に、さらに大きな問題が発生したからだ。 原油は輸出できないわけではない。しかし、とんでもない遠回りになる 重要なので誤解のないようにしたい。 サウジ原油が完全に世界市場から消えるわけではない。 ヤンブーから北上し、 ヤンブー → スエズ運河 → 地中海 → ジブラルタル海峡 → 大西洋 → 喜望峰 → インド洋 → アジア という巨大な迂回ルートが存在する。 実際、現在ヤンブーから輸出される原油の約70%が北方向へ向かっているとAPは報じている。 ただし韓国までなら通常約24日だった輸送が、 約54日。 倍以上になる可能性がある。 タンカーの用船料も通常時で1日数万ドル、現在の混乱下では一部で1日10万ドル超まで上昇している。 したがって問題は「原油がゼロになる」ではない。 世界が同じ量の原油を運ぶために、より多くの船・時間・燃料・保険料・運賃を必要とするようになる。 これは原油価格そのものとは別に、世界経済へコストを押し付ける。 そして月曜日――市場が最も恐れるのは「原油高+金利高」 ここから株の話になる。 今回のショックを、 「原油が上がるから石油株が上がる」 だけで考えると危ない。 市場にとって本当に厄介なのは、 中東危機 → 原油高 → ガソリン・物流・電力コスト上昇 → インフレ再加速 → 中央銀行が利下げしにくくなる → 国債利回り上昇 → 株式のバリュエーション低下 という連鎖だ。 すでにその兆候は出ている。 今週の米国市場では原油高とインフレ懸念によって株式が下落し、国債利回りが上昇した。 つまり市場はすでに、 「原油100ドル時代の再定着」 を警戒し始めている。 セクター別に見ると、勝者と敗者はかなり分かれる ◎ 石油・エネルギー 最大の恩恵候補。 特に中東以外で生産する米国、カナダなどの石油会社は相対的に有利になる。 実際、原油が100ドルを突破した9日の米国市場では、S&P500の中でエネルギーだけが上昇し、約1.7%高となった。 ただしサウジ関連企業は単純な原油高メリットではなく、インフラ攻撃による供給障害リスクも考える必要がある。 予想:強い ◎ 防衛・軍需 フーシ派、サウジ、イラン、米国という構図がさらに緊張すれば、防空ミサイル、レーダー、ドローン対策、電子戦関連への需要は増える。 予想:強い ◎ タンカー・海運 少し複雑だ。 航路長期化は船腹を実質的に吸収する。 24日だった航海が54日になるなら、同じ量を運ぶために必要なタンカー数が増える。 したがってタンカー運賃には上昇圧力がかかる。 ただし紅海航行そのもののリスク、保険料、燃料費も上がるため、船会社なら何でも買いではない。 予想:タンカー中心に強い ○ 金・金鉱株 地政学リスクだけなら典型的な逃避先。 ただし米国債利回りとドルが急上昇すると金の上値を抑える可能性もある。 予想:やや強い △ 銀行 金利上昇は利ざやにはプラスだが、景気後退リスクと信用コスト上昇はマイナス。 今回の「悪い金利上昇」では素直に銀行株高になるとは限らない。 予想:まちまち ▼ ハイテク・半導体 かなり注意したい。 NVIDIAなどAI企業の業績そのものが中東情勢で突然悪化するわけではない。 問題は金利だ。 原油高→インフレ→米金利上昇となれば、PERの高いグロース株ほどバリュエーション調整を受けやすい。 NASDAQには向かい風になる。 予想:弱い ▼ 航空 かなり厳しい。 ジェット燃料価格上昇に加えて、中東上空を避ける航路変更まで発生すれば燃料使用量も増える。 予想:かなり弱い ▼ 自動車 原油高による消費者負担増、物流コスト上昇、インフレによる金利高の三重苦。 特に輸入エネルギー依存度の高い日本・韓国・欧州メーカーには注意。 予想:弱い ▼ 小売・外食・物流 原材料費、電気代、輸送費が同時に上昇する。 しかもガソリン価格上昇によって消費者の可処分所得も減る。 価格転嫁できない企業ほど利益率が圧迫される。 予想:弱い 日本株には米国以上に嫌な組み合わせ 日本はエネルギー輸入国だ。 だから原油高は、 輸入額増加 → 貿易収支悪化 → 企業コスト上昇 → 家計負担増加 につながる。 特に、 航空・陸運・電力ガス・化学・紙パ・小売・外食 には逆風。 反対に、 石油開発・商社・海運・防衛 には資金が逃げ込む可能性がある。 したがって日経平均だけを見るより、 指数下落の中で大規模なセクターローテーションが発生する可能性 を考えておいた方がいい。 月曜日の予測 9月14日の市場について、現時点では私は下方向への警戒を強めている。 理由は、金曜日の市場が今回の最新ニュースを完全には織り込んでいない可能性があるからだ。 特に週末に明らかになった、 ① 東西パイプライン停止 ② ペリム島掌握 ③ サウジ原油供給の低下 ④ 米国がサウジへの直接軍事介入を現時点では見送っている という組み合わせは重い。Reutersによれば、米国は直接介入を断る一方、情報面での支援を提示している。 ただし、ここで「月曜暴落」と断定するのも危険だ。 月曜までに、 パイプライン再開 フーシ派との停戦協議 米国による航路安全確保 サウジ側の供給回復策 などが発表されれば、原油価格が急落し、株式市場が逆に買い戻される可能性も十分ある。 したがって一番重要なのは日経先物より先に原油を見ることだと思う。 原油が週明け再び急騰するなら、 原油↑ → 米金利↑ → NASDAQ↓ → 日本株↓ という流れを警戒。 逆に原油が100ドル近辺または100ドルを割って落ち着けば、 「最悪ケースはいったん回避」 としてグロース株を中心に強烈なショートカバーが起きる可能性がある。 月曜日の最大のポイント 今回の危機は、 「戦争が拡大するか」 だけを見てはいけない。 見るべき数字は、 原油価格・タンカー運賃・米10年債利回り。 この3つが同時に上昇するなら、世界株にはかなり危険なシグナルになる。 逆に、この3つのうち原油が崩れれば市場心理は大きく変わる。 そして最も危険なシナリオは、 ホルムズ海峡の混乱が続く中、東西パイプラインの停止が長期化し、さらにバブ・エル・マンデブの航行まで本格的に止まること。 そうなれば「中東情勢」というニュースでは済まない。 世界のエネルギー供給網そのものを揺さぶるショックになる。 月曜日、世界のマーケットがまず確認するのはそこだ。

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本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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