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黒田室長はAIを教えない 外伝

美咲は今日もAIに話しかける

3

提案書が真っ白

提案資料を丸ごと作らせるのではなく、課題整理、構成、言い換え、レビューへ仕事を分解する。

読了時間 約40PowerPoint・提案設計

午前九時十二分。

美咲は、昨日の夕方に開いたPowerPointを、もう一度開いた。

一枚目には、仮のタイトルだけが入っている。

『業務効率化システム導入のご提案』

二枚目以降は、真っ白だった。

スライド一覧には、何も書かれていない白い四角が並んでいる。

美咲は一枚目を見た。

次に二枚目を見る。

また一枚目へ戻る。

タイトルを眺める。

そして、もう一度二枚目を見る。

「何も浮かばない……」

昨日から、画面はほとんど変わっていなかった。

今回の提案先は、従業員約百二十名の食品卸会社だった。

商品の受注は、電話、FAX、メールで届く。

営業担当が注文内容を確認し、事務担当が基幹システムへ入力する。

入力後は倉庫へ出荷指示を送り、欠品があれば営業担当が顧客へ連絡する。

一つひとつは難しい業務ではない。

しかし、注文の受付方法がばらばらで、転記作業が多い。

入力ミスも起きる。

繁忙期には、受注処理だけで残業になることもあるらしい。

営業部長の山内は、美咲にこう言った。

「業務効率化システムを提案したい。金曜日までにたたき台を作って」

今日は水曜日。

残された時間は、三日もなかった。

しかも、美咲は提案資料を一から作った経験がほとんどない。

過去の資料を修正したことはある。

文章を差し替えたこともある。

数字を更新したこともある。

しかし、構成そのものを考えるのは初めてだった。

美咲は共有フォルダを開いた。

『提案書』

『営業資料』

『過去案件』

それらしいフォルダを順番に開く。

似たようなPowerPointがいくつも並んでいた。

『業務改善提案書_最終』

『業務改善提案書_修正版』

『業務改善提案書_修正版2』

『業務改善提案書_最終確定』

「どれが本当の最終なの……」

一番新しいファイルを開く。

スライドは二十八枚あった。

会社紹介。

サービス概要。

市場環境。

導入実績。

機能一覧。

導入効果。

料金。

スケジュール。

サポート体制。

よくある質問。

一通りそろっている。

見た目もきれいだった。

「これを使えば早いかも」

美咲はファイルを複製した。

会社名を変更する。

日付を変更する。

不要そうなスライドを削除する。

サービス名を今回のシステム名へ変える。

十分ほど作業したところで、手が止まった。

二枚目には、こう書かれている。

『小売業界を取り巻く市場環境』

今回の提案先は、食品卸会社だった。

次のスライドには、店舗スタッフの人手不足について書かれている。

今回の会社では、店舗スタッフではなく、受注事務の負担が問題だった。

導入効果のページには、来店客数の増加と書かれている。

今回の提案では、来店客数は関係ない。

「全然使えない」

美咲は削除した。

残ったのは、会社紹介と機能一覧と料金表だけだった。

白紙よりは進んだ。

しかし、提案書には見えなかった。

製品カタログを数枚つなげただけだった。

「そもそも、提案書って何を入れるの?」

美咲は隣の佐伯に聞いた。

佐伯は自分のパソコンから目を離さずに答えた。

「課題と解決策じゃない?」

「それは分かるんですけど、何枚くらい必要ですか」

「案件による」

「最初に会社紹介は必要ですか」

「相手がうちを知っているなら、いらないかも」

「機能一覧は全部入れた方がいいですか」

「全部は多いんじゃない?」

「どこまで入れればいいですか」

「相手が必要なところまで」

美咲は黙った。

「それが分からないから聞いてるんですけど」

佐伯はようやく顔を上げた。

「ごめん。でも、本当に相手によるんだよ」

「提案資料の型みたいなものはないんですか」

「型はあるけど、型どおり作っても刺さらないときは刺さらない」

「刺さるって、何がですか」

「相手が、これなら自分たちの問題が解決しそうだと思うこと」

佐伯はそれだけ言うと、また自分の作業へ戻った。

美咲は画面を見る。

真っ白なスライド。

過去資料。

商品説明。

料金表。

相手の課題。

情報はある。

しかし、順番が分からない。

昨日学んだことを思い出した。

AIはエスパーではない。

「提案資料を作って」と言うだけでは、自分の欲しいものは出てこない。

目的。

相手。

伝える内容。

避けたいこと。

形式。

長さ。

印象。

昨日、ノートに書いた七項目だった。

美咲はAIチャットを開いた。

入力欄に書く。

『食品卸会社向けに、業務効率化システムの提案資料を作ってください。』

そこまで入力して、止まった。

このままでは足りない。

消去する。

もう一度書く。

『食品卸会社向けに、受注業務を効率化するシステムの提案資料を作りたいです。

提案先は従業員約120名です。

現在は電話、FAX、メールで注文を受け、事務担当が基幹システムへ手入力しています。

転記作業が多く、入力ミスや繁忙期の残業が課題です。

この会社に、受注情報を一元管理し、入力作業を減らすシステムを提案します。

PowerPointの構成案を作ってください。』

送信する。

AIはすぐに回答した。

『以下のような構成がおすすめです。

  1. 表紙
  2. ご提案の背景
  3. 現状の課題
  4. 課題が業務へ与える影響
  5. ご提案するシステムの概要
  6. 主な機能
  7. 導入による効果
  8. 導入スケジュール
  9. 費用
  10. サポート体制
  11. まとめ』

美咲は画面を見た。

「普通……」

間違ってはいない。

必要そうなものはそろっている。

しかし、過去の資料とほとんど変わらない。

どのスライドに何を書けばよいのかも分からない。

この構成を使っても、また機能一覧と料金表を貼り付けるだけになりそうだった。

美咲は入力した。

『各スライドに入れる内容も詳しく書いてください。』

AIはスライドごとの説明を追加した。

現状の受注フロー。

電話、FAX、メールによる注文受付。

手入力による転記作業。

入力ミスの発生。

システムの機能一覧。

受注情報の一元化。

自動データ連携。

進捗管理。

効果として、作業時間の削減。

入力ミスの減少。

残業時間の削減。

美咲は読み進めた。

確かに、先ほどより具体的だった。

しかし、何かが足りなかった。

きれいにまとまっている。

でも、この会社のために作った資料には見えない。

別の会社名に変えても、そのまま使えそうだった。

「何が違うんだろう」

美咲は提案先との打ち合わせメモを開いた。

一週間前、山内と一緒に訪問したときの内容だった。

相手は、受注事務を担当する課長と、システム担当者だった。

メモには、次のような発言が残っている。

『午前中に注文が集中する』

『FAXがかすれていて、数字を読み間違えることがある』

『得意先ごとに注文書の形式が違う』

『営業担当が外出中だと、確認に時間がかかる』

『入力後に倉庫から在庫不足の連絡が来る』

『繁忙期は、受注担当が二時間ほど残業する日がある』

『新しいシステムを入れても、得意先側のやり方は変えにくい』

最後の一文で、美咲の目が止まった。

新しいシステムを入れても、得意先側のやり方は変えにくい。

つまり、提案先が心配しているのは、機能の多さではない。

取引先がFAXや電話を使い続けても、本当に効率化できるのか。

そこが重要だった。

美咲はAIへ入力した。

『先ほどの構成だと、一般的すぎる気がします。

提案先は、新しいシステムを導入しても、得意先からの電話やFAXがなくならないことを心配しています。

そのため、単にシステム機能を説明するのではなく、現在の受注方法を大きく変えずに、社内の転記作業を減らせることを伝えたいです。

この点を中心に、構成を作り直してください。』

AIの回答が変わった。

『以下の流れにすると、提案先の不安に寄り添った構成になります。

  1. 表紙
  2. 今回のご提案で目指すこと
  3. 現在の受注業務の流れ
  4. 現場で発生している負担
  5. 効率化が進みにくい理由
  6. 得意先の注文方法を変えずに改善する考え方
  7. ご提案する仕組み
  8. 注文方法ごとの取り込みイメージ
  9. 導入後の業務フロー
  10. 導入によって期待できる効果
  11. 導入時の懸念と対応
  12. 導入スケジュール
  13. 費用
  14. 次のステップ』

美咲は先ほどより長く画面を見た。

六枚目。

『得意先の注文方法を変えずに改善する考え方』

これが、今回の提案の中心になる。

電話やFAXをなくすのではない。

受け取った後の社内処理を変える。

そこを説明すれば、相手の不安に答えられる。

「提案って、機能を見せることじゃないんだ」

美咲は小さくつぶやいた。

そのとき、背後から黒田の声がした。

「では、何を見せるんですか」

美咲は驚いて振り返った。

「いつからいたんですか」

「今です」

「絶対、もう少し前からいましたよね」

黒田は答えず、美咲の画面を見た。

「提案書ですか」

「はい。受注業務を効率化するシステムの提案資料です」

「何枚ですか」

「今の案だと十四枚です」

「多いですか」

「分かりません」

黒田は美咲の机の横に立った。

「一番伝えたいことは何ですか」

美咲は先ほど見つけた言葉を口にした。

「得意先の注文方法を変えなくても、社内の転記作業を減らせることです」

「では、それが伝われば提案は成功ですか」

「それだけでは足りないと思います」

「何が足りませんか」

美咲は考えた。

効率化できる。

それだけでは、相手は導入を決めない。

費用。

期間。

現場の負担。

今のシステムとの連携。

導入後に本当に使えるのか。

「できることだけでなく、導入しても大丈夫だと思ってもらう必要があります」

「なぜ大丈夫だと思えないんですか」

「失敗したくないからです」

「何を失敗だと感じますか」

美咲は打ち合わせメモを見た。

新しいシステムを入れたのに、現場の仕事が増える。

得意先に変更をお願いしなければならない。

操作が難しい。

今の基幹システムと連携できない。

思ったほど残業が減らない。

「導入したのに、今より大変になることです」

黒田はうなずいた。

「提案する側は、良くなる話をします」

「はい」

「提案される側は、悪くなる可能性を考えます」

美咲はメモを取った。

「だから、効果だけでなく、不安への答えも必要なんですね」

「相手が決められない理由を減らすのが提案です」

「決められない理由……」

「機能をたくさん並べることではありません」

美咲は、過去の資料にあった機能一覧を思い出した。

二十個以上の機能が、小さな文字で並んでいた。

作る側は、これだけできると伝えたかったのだろう。

でも、見る側からすれば、自分たちに何が必要なのか分からなくなる。

「では、資料は相手の不安から作るんですか」

「不安だけではありません」

「では、何からですか」

黒田はいつものように、すぐには答えなかった。

美咲は少し待った。

やはり答えない。

「また自分で考えろ、ですね」

「はい」

黒田はそう言って、自分の席へ戻った。

美咲はAIチャットに戻った。

相手が決められない理由。

そこから資料を考える。

美咲は新しい指示を入力した。

『提案先が導入を判断できない理由を整理してください。

提案先は食品卸会社です。

現在は電話、FAX、メールで注文を受け、受注担当が基幹システムへ入力しています。

課題は、転記作業、入力ミス、繁忙期の残業です。

一方で、次のような不安があります。

・得意先の注文方法を変えられない ・新しいシステムで現場の負担が増えないか ・現在の基幹システムと連携できるか ・導入して本当に効果が出るか ・操作が難しくないか

相手が導入を判断するために、提案資料で答えるべき質問を整理してください。』

AIは回答した。

『提案資料では、少なくとも次の質問に答える必要があります。

  1. 今、どの業務に負担が集中しているのか
  2. なぜ現在の方法では改善しにくいのか
  3. 得意先の注文方法を変えずに、どこを改善できるのか
  4. 電話、FAX、メールの情報をどのように一元化するのか
  5. 現在の基幹システムとどのように連携するのか
  6. 導入後、担当者の作業は具体的にどう変わるのか
  7. どの程度の時間削減やミス削減が期待できるのか
  8. 現場担当者が使いこなせるのか
  9. 導入時の作業負担はどの程度か
  10. 問題が起きた場合、どのような支援があるのか
  11. 費用に対して、どのような効果が見込めるのか
  12. どのような手順で導入判断を進めればよいのか』

美咲は、その一覧をPowerPointの横に置いた。

資料に入れる内容ではない。

相手が心の中で考えている質問だった。

この質問へ順番に答えていけば、提案資料になる。

美咲はAIへ続けた。

『この12の質問に答える流れで、10枚以内の提案資料構成にしてください。

1枚につき、伝えたいことは一つにしてください。

機能説明を中心にせず、相手の課題、改善後の姿、不安への回答が伝わる構成にしてください。』

AIが新しい案を作った。

『1. 表紙

タイトル: 受注方法を変えずに、入力作業を減らす業務改善のご提案

伝えること: 今回の提案の中心を一文で示す。

  1. 現在の受注業務で起きていること

伝えること: 電話、FAX、メールから届く注文を人が基幹システムへ転記している。

  1. 現場の負担が発生する理由

伝えること: 注文経路と書式がばらばらなため、確認、転記、問い合わせが増えている。

  1. 今回の改善方針

伝えること: 得意先の注文方法は変えず、社内で受注情報を一元化する。

  1. ご提案する仕組み

伝えること: 電話、FAX、メールの注文情報を一か所に集約し、基幹システムへの入力を支援する。

  1. 導入後の業務フロー

伝えること: 受注担当者の作業が、転記中心から確認中心へ変わる。

  1. 期待できる効果

伝えること: 入力時間、確認作業、入力ミス、残業の削減が期待できる。

  1. 導入時の不安への対応

伝えること: 既存システムとの連携、操作教育、段階導入、サポート体制を示す。

  1. 導入スケジュールと費用

伝えること: いつ、何を行い、どの程度の費用が必要かを示す。

  1. 次のステップ

伝えること: 現状業務の確認、対象範囲の決定、試験導入の実施を提案する。』

「十枚」

美咲はスライドを十枚に増やした。

一枚目のタイトルを書き換える。

『受注方法を変えずに、入力作業を減らす業務改善のご提案』

昨日までのタイトルより、ずっと具体的だった。

『業務効率化システム導入のご提案』

それだけでは、何をどう改善するのか分からない。

新しいタイトルなら、提案の中心が一目で分かる。

二枚目には、現在の業務フローを書く。

電話。

FAX。

メール。

それぞれの矢印を、受注担当者へ向ける。

受注担当者から、基幹システムへ矢印を引く。

さらに、倉庫へ出荷指示を出す流れを加える。

美咲は図形を並べた。

しかし、きれいに整わない。

矢印がずれる。

文字の大きさもばらばらになる。

「PowerPoint、難しい……」

美咲はAIに聞こうとして、手を止めた。

AIは図形を直接整えてくれるわけではない。

少なくとも、今使っている環境では、自分で操作する必要がある。

それでも、図の作り方は相談できる。

『現在の受注業務の流れを、PowerPoint一枚で分かりやすく見せたいです。

要素は次の通りです。

・得意先から電話、FAX、メールで注文が届く ・受注担当が内容を確認する ・受注担当が基幹システムへ手入力する ・倉庫へ出荷指示を送る ・欠品時は営業担当へ確認する ・営業担当から得意先へ連絡する

複雑に見えすぎない図の配置方法を、文章で説明してください。』

AIは配置案を返した。

中央に受注担当を置く。

左側に電話、FAX、メールを縦に並べる。

右側に基幹システムと倉庫を配置する。

下側に欠品時の例外処理として、営業担当と得意先への連絡を配置する。

通常の流れは太い矢印。

例外処理は点線。

課題が起きている部分には、小さな注意マークを置く。

美咲は指示どおりに図形を並べた。

今度は、流れが分かりやすい。

すべてを一直線に並べるのではなく、通常の流れと例外処理を分けたことで、情報が整理された。

三枚目には、負担が発生する理由を書く。

最初、美咲は箇条書きを六つ並べた。

・注文経路が複数ある

・注文書の形式が異なる

・手入力が必要

・入力ミスが発生する

・欠品確認に時間がかかる

・繁忙期に残業が発生する

悪くはない。

しかし、文字ばかりだった。

美咲はAIへ入力する。

『次の六つの課題を、単なる箇条書きではなく、原因と結果が分かる形に整理してください。

・注文経路が複数ある ・注文書の形式が異なる ・手入力が必要 ・入力ミスが発生する ・欠品確認に時間がかかる ・繁忙期に残業が発生する』

AIは三段階に整理した。

『原因』

・電話、FAX、メールで注文が届く

・得意先ごとに注文書の形式が異なる

『業務上の負担』

・内容確認に時間がかかる

・基幹システムへの手入力が必要

・欠品時の確認と連絡が増える

『結果』

・入力ミスが発生する

・処理が午前中に集中する

・繁忙期の残業につながる

美咲はスライドを三列に分けた。

原因。

業務上の負担。

結果。

矢印でつなぐ。

これなら、問題がなぜ起きているのかが分かる。

「課題を並べるだけじゃ駄目なんだ」

原因と結果がつながると、次にどこを変えるべきかが見える。

四枚目は、今回の改善方針。

美咲は中央に大きく一文を置いた。

『得意先の注文方法は変えず、社内の受注処理を変える』

その下に、小さく補足を書く。

『電話、FAX、メールをすぐになくすのではなく、受け取った情報を社内で一元管理し、転記作業を減らします。』

このスライドは、ほとんど文章がなかった。

それでも、十枚の中で最も重要に見えた。

五枚目には、提案する仕組みを書く。

美咲は商品資料を開いた。

そこには機能が二十三個並んでいた。

AI-OCR。

メール自動取り込み。

受注情報一元管理。

入力チェック。

在庫連携。

顧客マスタ連携。

権限設定。

承認フロー。

進捗管理。

通知機能。

検索機能。

CSV出力。

履歴管理。

ほかにも多くの機能があった。

全部を入れると、また機能一覧になる。

美咲はAIに相談した。

『この提案で説明すべき機能を、相手の課題に直接関係するものだけに絞ってください。

相手の課題は、電話、FAX、メールから届く注文の転記作業、入力ミス、欠品時の確認、繁忙期の残業です。

機能候補は次の通りです。

AI-OCR メール自動取り込み 受注情報一元管理 入力チェック 在庫連携 顧客マスタ連携 権限設定 承認フロー 進捗管理 通知機能 検索機能 CSV出力 履歴管理』

AIは五つに絞った。

AI-OCR。

メール自動取り込み。

受注情報一元管理。

入力チェック。

在庫連携。

さらに、それぞれの機能名ではなく、相手にとっての意味へ言い換えた。

FAXの注文書を読み取り、入力項目へ変換する。

メール注文を自動で取り込む。

電話、FAX、メールの注文を一か所で確認する。

入力漏れや形式違いを確認する。

在庫不足を早い段階で把握する。

美咲は気づいた。

「機能名だけでは、相手には分からない」

AI-OCRという言葉を知っている人には伝わる。

知らない人には、何が便利なのか分からない。

機能を説明するのではなく、その機能によって何が変わるかを説明する。

美咲はスライド上部に、こう書いた。

『注文を一か所に集め、入力前の確認作業を減らします』

その下に、五つの仕組みを配置した。

六枚目には、導入後の業務フローを作る。

現在は、受注担当者が内容を確認し、基幹システムへ手入力している。

導入後は、注文情報がシステムへ取り込まれ、受注担当者は内容を確認して確定する。

作業が、入力中心から確認中心へ変わる。

美咲は、現在と導入後を左右に並べた。

現在。

受け取る。

読む。

入力する。

確認する。

修正する。

導入後。

取り込む。

確認する。

確定する。

工程数が減っている。

見た瞬間に違いが分かった。

七枚目は導入効果だった。

ここで、美咲の手が止まった。

作業時間の削減。

入力ミスの減少。

残業の削減。

効果は書ける。

しかし、具体的な数字がない。

商品資料には『最大六十パーセント削減』と書かれていた。

過去の導入事例では、受注入力時間が一日三時間から一時間二十分になったとある。

ただし、今回の会社でも同じ結果になるとは限らない。

美咲はAIへ聞いた。

『提案資料に導入効果を書きたいですが、今回の会社での実測値はまだありません。

商品資料には、他社事例として受注入力時間を最大60パーセント削減した実績があります。

この数字を誇張せず、誤解を招かない書き方にしてください。』

AIは文章案を出した。

『他社事例では、受注入力時間を最大約60パーセント削減した実績があります。

ただし、削減効果は注文件数、帳票形式、現在の業務フローなどによって異なります。

本提案では、現状業務を確認したうえで、対象業務と期待効果を試算します。』

美咲はそのまま使わなかった。

少し長かったため、スライド向けに短くする。

『他社事例:受注入力時間を最大約60%削減』

その下に小さく、

『実際の効果は、注文件数や帳票形式、現行業務により異なります。現状確認後に個別試算します。』

と入れた。

効果を大きく見せたい気持ちはあった。

しかし、都合の良い数字だけを書くと、提案ではなく宣伝になる。

八枚目は、導入時の不安への対応。

美咲は、相手が心配していた内容を四つにまとめた。

得意先の注文方法は変えなくてよいか。

既存の基幹システムと連携できるか。

現場担当者が操作できるか。

導入時に業務が止まらないか。

それぞれに回答を書く。

注文方法は段階的に対応する。

既存システムとの連携方法は事前調査する。

操作説明とマニュアルを用意する。

一部業務から試験導入する。

このスライドを作りながら、美咲は黒田の言葉を思い出した。

提案される側は、悪くなる可能性を考える。

確かに、その不安へ先に答えるだけで、資料の印象は変わった。

九枚目は、スケジュールと費用。

費用は山内とシステム部が確認中だった。

美咲が勝手に書くことはできない。

そのため、仮のスケジュールだけを作り、費用欄には『お見積り範囲を確認後に提示』と記載した。

現状業務の確認。

連携方法の調査。

試験導入。

操作説明。

本稼働。

段階的な流れにする。

十枚目は、次のステップ。

『まずは、三日分の注文データを使って試験確認を行いませんか』

美咲はそこまで書いて、手を止めた。

次のステップを、勝手に決めてよいのだろうか。

山内に確認が必要だった。

資料全体を保存する。

時計を見る。

午後二時四十分。

朝から五時間以上経っていた。

昼休みも短くなった。

それでも、スライドは十枚そろった。

真っ白だった画面が、提案資料の形になっていた。

美咲は、完成したスライドを最初から表示した。

一枚目。

受注方法を変えずに、入力作業を減らす。

二枚目。

現在の業務フロー。

三枚目。

負担が発生する原因。

四枚目。

改善方針。

五枚目。

提案する仕組み。

六枚目。

導入後の業務フロー。

七枚目。

期待できる効果。

八枚目。

不安への対応。

九枚目。

スケジュールと費用。

十枚目。

次のステップ。

流れはつながっている。

しかし、美咲には判断できなかった。

本当に提案書になっているのか。

自分では、良く見えてしまう。

美咲は山内へチャットを送った。

『提案資料のたたき台を作成しました。お時間のあるときに確認をお願いできますでしょうか。』

数分後、返信が来た。

『15時から見ます。会議室に持ってきてください。』

美咲は急いで誤字を確認した。

数字。

日付。

会社名。

ページ番号。

資料内に、別会社の名前が残っていないか。

以前の資料を流用した部分は少ない。

それでも、念のため検索する。

問題はなかった。

午後三時。

美咲は会議室で資料を投影した。

山内は腕を組みながら、一枚目から順番に見た。

美咲は立ったまま説明する。

「今回の提案では、得意先の注文方法を変えるのではなく、社内の受注処理を変えることを中心にしています」

山内は何も言わない。

二枚目。

三枚目。

四枚目。

美咲は説明を続けた。

五枚目の機能説明で、山内が口を開いた。

「機能はこれだけですか」

「提案先の課題に関係するものだけに絞りました」

「権限管理や履歴管理は?」

「今回は入れていません」

「必要ではないですか」

美咲は一瞬迷った。

機能としては必要だ。

しかし、最初の提案で伝える中心ではないと思った。

「詳細機能としては必要ですが、最初の説明では、受注担当者の負担がどう減るかを優先しました」

山内は資料を見た。

「続けてください」

六枚目。

導入前後の業務フロー。

七枚目。

導入効果。

八枚目。

導入時の不安への対応。

九枚目。

スケジュール。

十枚目。

次のステップ。

説明を終える。

会議室が静かになった。

山内は数秒間、資料を見ていた。

美咲は不安になった。

やはり、機能が少なすぎたのか。

会社紹介もない。

導入実績も一つしかない。

資料として薄いのかもしれない。

山内が言った。

「誰に相談しました?」

美咲の心臓が一度、大きく動いた。

「AIにも相談しました」

「AIが作ったんですか」

美咲は少し考えてから答えた。

「構成や整理は手伝ってもらいました。でも、内容は打ち合わせメモを見ながら考えました」

山内は一枚目へ戻した。

「このタイトル、いいですね」

「ありがとうございます」

「いつもの『システム導入のご提案』より、何をする資料か分かる」

山内は四枚目を表示した。

『得意先の注文方法は変えず、社内の受注処理を変える』

「これが今回の提案の中心ですね」

「はい」

「先方も、取引先のやり方を変えるのは難しいと言っていました」

「そこが一番の不安だと思いました」

「そうですね」

山内は七枚目の効果を見た。

「最大六十パーセント削減は、他社事例だと分かるようにしている」

「今回も同じ効果が出るとは限らないので」

「いいと思います」

美咲は少し肩の力を抜いた。

山内は最後のページへ進んだ。

「三日分の注文データで試験確認、これは良いですね」

「勝手に書いたので、実施できるか確認が必要ですが」

「技術的にはできると思います。システム部に確認しましょう」

山内は資料を閉じた。

「修正はあります」

「はい」

「費用は明日までに入れます。あと、導入実績を一枚追加してください」

「会社紹介ではなく、導入実績ですか」

「先方が判断するときに、同じような会社で使われているかは気になるでしょう」

美咲はうなずいた。

機能一覧を増やすのではない。

相手が決められない理由を減らすために、導入実績を加える。

黒田の言葉とつながっていた。

「それと」

山内は少し間を置いた。

「最初からこの構成が出たんですか」

「いえ。最初は普通の提案書になりました」

「普通の?」

「課題、機能、効果、料金という構成です」

「それでも間違いではありません」

「でも、今回の会社向けには見えませんでした」

山内はうなずいた。

「提案書は、正しい資料を作るだけでは足りません」

「はい」

「相手が、自分たちのことを分かってくれていると思えるかどうかです」

美咲はその言葉をノートへ書いた。

会議室を出ると、黒田が廊下を歩いていた。

美咲は資料を抱えたまま追いかけた。

「黒田室長」

黒田が振り返る。

「どうでしたか」

「資料ですか」

「はい」

「見ていません」

「山内部長から何か聞いたのかと思いました」

「聞いていません」

美咲は少し残念に思った。

それでも、今日学んだことを話したくなった。

「提案書は、商品を説明する資料ではないんですね」

「場合によります」

「また、それですか」

「商品説明が必要な提案もあります」

「では、今回の場合は?」

黒田は美咲が持っている資料を見た。

「何を提案したんですか」

「受注業務を効率化するシステムです」

「本当に?」

美咲は聞き返した。

「違うんですか」

「相手は、システムが欲しいと言ったんですか」

「いえ。受注処理の負担を減らしたいと言っていました」

「では、提案したのはシステムではないですね」

美咲は考えた。

相手が欲しいのは、機能ではない。

FAXを自動で読み取る技術でもない。

受注担当者が、毎日同じ内容を何度も入力しなくてよくなること。

入力ミスが減ること。

繁忙期でも、定時に帰れること。

「仕事の負担が減る未来です」

黒田は少しだけうなずいた。

「そのための手段が、システムです」

「提案書では、手段より先に未来を見せるんですね」

「未来だけでは、信用されません」

「だから、どうやって実現するかも必要です」

「そうです」

「不安への答えも」

「はい」

美咲は今日作った十枚を思い出した。

相手の現在。

問題が起きる理由。

改善方針。

実現方法。

変化。

効果。

不安への回答。

次の行動。

一枚ずつは難しくない。

しかし、順番に並べることで、提案になる。

「最初、AIに構成を作ってもらったら、普通の資料が出てきました」

「普通の質問をしたんでしょう」

「食品卸会社向けの業務効率化提案書を作って、と頼みました」

「では、普通の答えになります」

「その後、相手が何を心配しているかを伝えました」

「答えは変わりましたか」

「はい」

黒田は歩き始めた。

美咲も横を歩く。

「AIは、資料を作るのが得意なんですか」

「私はAIを教えません」

「今日は聞いていません。感想です」

黒田は少し考えた。

「資料を作るという言葉には、いろいろな仕事が含まれています」

「構成を考える」

「文章を書く」

「図を作る」

「数字を確認する」

「見た目を整える」

「相手に説明する」

「はい」

「AIが得意なものもあれば、人が責任を持つものもあります」

「全部まとめて、資料作成だと思っていました」

「だから、どこから手をつければいいか分からなくなるんです」

美咲は立ち止まった。

今朝の自分が、まさにそうだった。

真っ白なPowerPointを見て、資料を全部作らなければならないと思っていた。

でも、最初に必要だったのは、スライドを作ることではなかった。

相手の課題を整理すること。

相手が判断できない理由を考えること。

提案の中心を一文にすること。

その後で、構成を作る。

文章を書く。

図にする。

数字を確認する。

仕事を分ければ、AIへ頼むこともできる。

「真っ白な資料が怖かったのは、全部を一度に作ろうとしていたからなんですね」

黒田は答えなかった。

代わりに、少しだけ笑った。

「その答えは、AIに聞いたんですか」

「自分で考えました」

「それなら、よかった」

黒田は自分の席へ戻った。

美咲も机へ戻る。

資料を開き、十一枚目を追加した。

導入実績。

食品関連企業の事例を一件だけ入れる。

会社名は出せないため、業種と規模だけを書く。

受注件数。

導入前の作業。

導入後の変化。

数字の出典を確認する。

誇張がないかを確認する。

さらに、PowerPointのノート欄に説明用の文章を書いた。

一枚につき、伝えたいことは一つ。

スライドにすべてを書かない。

詳細は口頭で説明する。

午後五時三十分。

提案資料のたたき台が完成した。

完璧ではない。

費用も未確定だった。

システム部への確認も残っている。

それでも、もう真っ白ではなかった。

美咲は一枚目を表示した。

『受注方法を変えずに、入力作業を減らす業務改善のご提案』

朝、このタイトルを見たときとは違う。

今は、この一文の後に何を話すのかが分かる。

誰に。

何を。

なぜ。

どのように。

どんな変化があるのか。

不安へどう答えるのか。

何を次にするのか。

美咲はAIチャットを開いた。

最後に、資料全体を確認するための質問を入力する。

『以下は、食品卸会社向けの提案資料構成です。

相手の立場から見たときに、

・分かりにくい点 ・根拠が不足している点 ・導入判断を妨げる不安 ・説明が重複している点

を指摘してください。

資料を褒める必要はありません。

厳しくレビューしてください。』

AIは、いくつかの指摘を出した。

電話注文をどのようにシステムへ取り込むのかが不明。

基幹システムとの連携方法が未確定。

最大六十パーセント削減の前提条件が必要。

導入時に現場が行う作業量が分からない。

試験導入で何を確認するのかを明確にした方がよい。

美咲は、一つずつ確認事項として資料へメモした。

AIに褒めてもらうためではない。

穴を見つけるために使う。

それも、今日覚えた使い方だった。

美咲はPowerPointを保存した。

ファイル名を入力する。

『食品卸会社向け業務改善提案書_たたき台』

最終とは書かなかった。

まだ、相手へ伝わる資料にしていく途中だった。

けれど、美咲にはもう、次に何を直せばよいかが分かっていた。

昨日までは、AIに資料を作ってもらおうと思っていた。

今日は、AIと一緒に、相手へ何を伝えるべきかを考えた。

真っ白なスライドを埋めたのは、AIではない。

相手の困りごとを、一つずつ言葉にした結果だった。

美咲はパソコンを閉じた。

今日もまた一つ、AIへの話しかけ方を覚えた。

美咲AIノート

今日のひとこと

提案資料は、商品を説明するためではなく、相手が「これなら決められる」と思えるように作る。

今日、美咲が覚えたこと

PowerPointを作るとき、最初からスライドを書き始めなくてもよい。

まず整理するのは、次の四つ。

・相手が今、何に困っているのか

・なぜ、その問題が起きているのか

・相手が導入を迷う理由は何か

・導入後、どのように変わるのか

AIへいきなり「提案資料を作って」と頼むと、一般的な構成が返ってくる場合がある。

間違いではないが、どの会社にも使える内容になりやすい。

相手との打ち合わせで出た言葉や、不安、制約を伝えることで、その会社向けの構成に近づけられる。

美咲の最初の頼み方

『食品卸会社向けに、業務効率化システムの提案資料を作ってください。』

この頼み方でも、AIは提案書の構成を作った。

しかし、

・会社紹介

・課題

・機能一覧

・導入効果

・料金

という一般的な内容だった。

今回の提案先が心配している、

『得意先の電話やFAXをなくせない』

という事情は反映されていなかった。

改善したプロンプト

あなたは、法人向け業務改善提案を支援するコンサルタントです。

食品卸会社向けに、受注業務を効率化するシステムの提案資料を作成します。

【提案先】

・従業員約120名

・電話、FAX、メールで注文を受けている

・受注担当が基幹システムへ手入力している

【現在の課題】

・注文経路が複数ある

・得意先ごとに注文書の形式が異なる

・転記作業が多い

・入力ミスが発生する

・欠品時の確認に時間がかかる

・繁忙期に残業が発生する

【提案先の不安】

・得意先の注文方法を変えられない

・新しいシステムで現場の負担が増えないか

・現在の基幹システムと連携できるか

・導入して本当に効果が出るか

・担当者が使いこなせるか

【今回伝えたいこと】

得意先の注文方法をすぐに変えなくても、社内の受注情報を一元化することで、転記作業と確認作業を減らせる。

【構成条件】

・10枚以内

・1枚につき、伝えたいことは一つ

・機能一覧を中心にしない

・現在の課題、改善方針、導入後の変化、不安への回答が伝わる流れにする

・各スライドのタイトルと、伝える内容を一文で示す

・最後は、相手が次に取れる行動で終える

提案資料の基本的な流れ

一、相手の現在

今、どのような業務を行っているのか。

二、問題の原因

なぜ負担やミスが発生しているのか。

三、改善の考え方

何を変え、何を変えないのか。

四、実現方法

どのような仕組みで改善するのか。

五、導入後の姿

担当者の仕事が、具体的にどう変わるのか。

六、期待できる効果

時間、ミス、コスト、負担がどう変化するのか。

七、不安への回答

導入時に心配される点へ、先に答える。

八、根拠

導入事例、試算、検証方法を示す。

九、導入方法

どのような順番で進めるのか。

十、次の行動

相手が無理なく判断を進められる一歩を示す。

スライドを作る前にAIへ聞く質問

『この提案を、相手が決められない理由は何ですか』

『相手が社内で説明するとき、どのような質問を受けますか』

『この提案の中心を、一文で表してください』

『機能ではなく、相手にとっての変化へ言い換えてください』

『現在と導入後の業務フローを比較してください』

『この構成で、根拠が不足している部分を指摘してください』

『相手の立場から、厳しくレビューしてください』

AIには、作成だけでなく、整理、比較、言い換え、レビューも頼める。

機能を相手の変化へ言い換える

悪い例。

『AI-OCR機能を搭載しています』

良い例。

『FAXの注文書を読み取り、手入力する項目を減らします』

悪い例。

『メール自動取り込み機能があります』

良い例。

『メールで届いた注文を、一つの画面で確認できます』

悪い例。

『在庫連携機能があります』

良い例。

『入力後ではなく、注文確認の段階で在庫不足に気づけます』

機能名だけでは、その機能によって自分の仕事がどう変わるのか分からない。

相手にとっての意味へ言い換える。

数字を使うときの注意

AIや過去資料に書かれている数字を、そのまま使わない。

・どの会社の事例か

・どの業務を対象にした数字か

・最大値か平均値か

・今回の会社でも同じ結果になるのか

・出典は確認できるか

を確認する。

他社事例を使う場合は、

『他社事例では』

『最大約』

『実際の効果は業務条件により異なる』

など、前提が分かるようにする。

数字を大きく見せることより、誤解を生まないことを優先する。

AIによる資料レビューのプロンプト

以下の提案資料構成を、提案先の立場からレビューしてください。

次の観点で、問題点を具体的に指摘してください。

・分かりにくい点

・説明が不足している点

・根拠がない点

・誤解を招く表現

・導入判断を妨げる不安

・内容の重複

・不要なスライド

・追加すべきスライド

資料を褒める必要はありません。

厳しく指摘したうえで、修正案を示してください。

【提案資料構成】

ここにスライドの構成や本文を貼り付ける。

使用時の注意

提案資料へ、取引先の機密情報や個人情報をそのまま入力しない。

会社名は『A社』、担当者名は『受注担当者』などに置き換える。

AIが作った内容については、必ず次の点を確認する。

・実際の打ち合わせ内容と合っているか

・商品やサービスに存在しない機能を書いていないか

・実現できないことを約束していないか

・費用やスケジュールを勝手に作っていないか

・導入事例や効果の数字に根拠があるか

・別会社の情報が混ざっていないか

・相手の課題を決めつけていないか

AIは、もっともらしい説明を作る。

だからこそ、正しいかどうかは人が確認する。

美咲の一歩

今日は、真っ白なPowerPointの前で何もできなくなった。

提案資料を作るという仕事が、大きすぎて、どこから始めればいいか分からなかった。

最初は、AIにスライドの構成を作ってもらった。

必要なものはそろっていた。

でも、誰にでも使える資料だった。

相手が何に困っているのか。

何を変えたくないのか。

何を不安に思っているのか。

そこまで伝えて、初めて今回の会社のための資料になった。

提案資料は、こちらが言いたいことを並べるものではない。

相手が知りたい順番に、答えを並べるものだった。

AIに提案資料を作ってもらったわけではない。

課題を分けてもらった。

不安を質問に変えてもらった。

機能を、相手にとっての変化へ言い換えてもらった。

資料の穴を指摘してもらった。

一つの大きな仕事を、小さな仕事に分けたことで、私にも進められた。

真っ白な画面が怖かったのは、答えがなかったからではない。

最初から完成させようとしていたからだった。

明日からは、スライドを開く前に、相手が何を決められずにいるのかを考えてみよう。

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